薄毛要因物質への作用

ノコギリヤシに期待される作用のひとつ目は、AGA(男性型脱毛症)の要因となる物質に関わる働きです。AGAは、男性ホルモンの一種であるテストステロンが5αリダクターゼという酵素の作用でジヒドロテストステロン(DHT)に変換されたあと、ヘアサイクルが乱れるために起こるといわれています。

ノコギリヤシに含まれる成分は、5αリダクターゼに作用し、DHTの生成に影響する可能性が研究されています。この作用が、注目されている理由です。

炎症への作用

ノコギリヤシには、AGAの一因となる毛包(髪を産みだす組織)の炎症を軽減させる効果も研究されています。人間の体内には、ロイコトリエンB4(LTB4)という物質があり、これが毛包で過剰に作られると、炎症を引き起こす場合があるといわれています。

しかし、ある研究では、ノコギリヤシの成分がLTB4をはじめとする炎症要因物質の遺伝子発現に影響したことが報告されています。基礎研究レベルの話題ではあるものの、ノコギリヤシの成分が注目されています。

前立腺肥大症について

前立腺肥大症に関する研究も、ノコギリヤシで注目されている分野のひとつです。前立腺肥大症は、AGAと同じくDHT(ジヒドロテストステロン)が関与していると考えられています。ノコギリヤシに関する研究が行われていますが、日本では医薬品として承認されていない点には注意してください。また「効果に一貫性があるとはいえない」という報告もあります。

ヨーロッパでは前立腺肥大症の治療薬として認可されている国もありますが、日本国内においては、ノコギリヤシはあくまで食品として扱われています。

ここでは、ノコギリヤシの副作用について次の注意点から解説します。

・消化器系の不調
・めまいや頭痛
・精力減退

ノコギリヤシの摂取による不調は起こりにくいと考えられていますが、どのような報告があるかは把握しておきましょう。

育毛を阻害する作用はない

ノコギリヤシには、めまいや頭痛などの不調が報告されているものの、抜け毛の増加といった報告は確認されていません。もし、ノコギリヤシを摂取しても薄毛の進行が止まらないのであれば、他に要因があると考えるのが賢明です。

可能性のひとつは、AGA(男性型脱毛症)が進行しているケースです。ノコギリヤシの摂取を続けても変化を実感できず、薄毛が進んでいる場合は、医師に相談しましょう。

発毛効果があるわけではない

ノコギリヤシには育毛を妨げる作用はありませんが、髪を新しく生やす「発毛効果」も認められていません。ノコギリヤシはあくまで食品として扱われており、医薬品として認められている発毛剤とは役割が根本的に異なります。

例えば、ミノキシジルやフィナステリドといった医薬品は国が効能効果を認めていますが、ノコギリヤシは食品であるため、そのような効能効果は認められていません。「髪が増えた」という体験談や口コミは、あくまで個人の感想として捉えてノコギリヤシの摂取を検討してください。

変化を感じないなら他の方法も検討する

ノコギリヤシを一定期間摂取しても、薄毛が進行していると感じる場合は、対策を見直すタイミングと考えましょう。もし薄毛の要因がAGA(男性型脱毛症)であれば、専門的な治療が必要になります。

目安として、6ヶ月以上継続しても変化が見られない場合は、他の方法も検討すべきです。現状把握のためにも、まずは専門のクリニックを受診し、医学的根拠のある治療法を医師に相談しましょう。

摂取目安量を守る

ノコギリヤシのサプリメントを摂取する際は、製品に記載されている1日の摂取目安量を必ず守りましょう。一般的なノコギリヤシエキスの摂取目安量は、1日あたり320〜340mgです。

目安量を超えてノコギリヤシを摂取すると、むしろ腹痛や下痢といった不調のリスクが高まる可能性があります。そのため、製品ごとに定められた摂取目安量を守り、自己判断で摂取量を増やさないようにしましょう。

抗血栓薬と併用しない

ノコギリヤシには、血液を固まりにくくする作用を持つ可能性が報告されています。そのため、血流を改善する抗血栓薬や抗血小板薬を服用している方がノコギリヤシを併用すると、相互作用が生じる可能性があります。

現在、何らかの抗血栓薬を服用している場合は、必ず主治医や薬剤師に相談してからノコギリヤシの摂取を検討してください。

未成年は摂取しない

ノコギリヤシは男性ホルモンに影響を与える可能性が報告されているため、未成年者の摂取は推奨されていません。第二次性徴をはじめとする身体の変化が大きい時期に、ノコギリヤシのようなホルモンへの作用が懸念される成分を摂取すると、予期せぬ影響を及ぼす可能性があるためです。

また、若年層の薄毛は生活習慣の乱れや睡眠不足など、さまざまな要因が考えられます。したがって、未成年者でノコギリヤシの摂取を検討している場合は自己判断で試すのではなく、まずは医師へ相談しましょう。

相性の良い栄養素を摂取する

ノコギリヤシの効果を高めるには、相性の良い成分を一緒に摂取する工夫が大切です。髪の材料となったり、材料の生成を助けたりする栄養素として、下表に記載する成分を積極的に摂取しましょう。

成分	役割	食品例
タンパク質	ケラチン(髪の主成分)の材料となる	肉、魚、卵
亜鉛	タンパク質を髪(ケラチン)へ再合成する	牡蠣、レバー
ビタミンB群	亜鉛の働きを助ける	豚肉、玄米、納豆

紹介した栄養素を毎日の食事にバランス良く取り入れてみてください。

継続的に摂取する

ノコギリヤシを摂取する場合は、短期間で判断せず、長期間にわたって継続的に摂取する取り組みが大切です。ノコギリヤシは、数日間摂取しただけでは変化を実感できないとされています。

一般的には、少なくとも3〜6ヶ月間、場合によっては1年以上の継続摂取が推奨されています。焦らず、毎日の習慣として根気強く摂取し続けましょう。

生活習慣を改善する

ノコギリヤシの摂取を開始したタイミングで、生活習慣の改善にも取り組むことがおすすめです。健康な髪を育むためにも、下記項目の改善を目指してみてください。

・バランスの取れた食事
・質の良い睡眠
・適度な運動
・ストレス管理
・適切なヘアケア

生活習慣の改善で、心身共に健康な状態を維持できるため、ノコギリヤシの働きをサポートできます。改善できる部分から少しずつ取り組んでみましょう。